脚立は必要か?

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検証対象は「南京事件『証拠写真』を検証する」P.92,93の4枚の写真です。

左から、写真12,写真13、写真A、写真B。

しかし、写真Aは写真13をトリミングしたものですから、検証すべきは3枚です。

写真は、Look 1938年11月22日号が報じています。
Look 1938年11月22日号
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写真のキャプションは、
Hands Tied,Chinese prisoners are used as live target for bayonets of Japanese recruits.In the foreground,a captive is being tormented. Another (left rear) is being clubbed to death. A thid (centre) has just received the death thrust. A fourth (rear) is being driven into the pit.

手を縛られて・・・中国人捕虜は生きたまま日本の新兵の銃剣の的になることがある。一番手前の捕虜は、激痛の真っ只中。左奥の捕虜は、叩かれて殺されようとしている。真中の捕虜は、とどめの一刺しを受けている。奥の4人目は、刑場に連行されたところだ。

記事は
KILLING FOR FUN!

Did Japanese soldiers make these photographs? Read the letter as right. In it, W.A.Farmer, of Hankow,China, who sent them to LOOK, charges the Japanese with butchering Chinese and burying them alive, merely for amusement, or to inspire raw recruits to kill. He says Japanese made these pictures and sent them to Shanghai. From these, prints were smuggled to Hankow.

娯楽殺人!!

日本兵が撮った写真だって? そうです、右の「手紙」を読んでね。 写真を送ってくれたW.A.ファーマー氏は、たかが娯楽のためとか新兵に殺しの精神を叩き込むためにとかで、中国人を虐殺したり生埋めにしたりする日本人、そんな連中に抗議してるよ。ファーマー氏によれば、日本兵は写真を撮って上海に送ったそうな。そのプリントがこっそり漢口に渡ったということ。
なお写真Aでは、上官らしき兵士が地面に寝そべって、刺殺の瞬間を見物しています。
写真12では、処刑が終って兵士達が整列しています。
これが本当なら、あまりにも惨酷な公開処刑です。

しかし、写真の真偽を疑う東中野氏は、
「『証拠写真』を検証する」P.95 でこういっています。

カメラは被写体から離れた高い位置にあることが、写真12、写真13、写真A、写真Bからいえる。私たちの経験からすると、盛り土または脚立を利用して、その上で撮らなければ、このような写真は撮影不可能だ。
ええっ? ホントですか?

著者はこの本の中で、随所にカメラ知識をひけらかし、写真への疑いを増幅させています。
 ・写真を黒く塗りつぶして生きている人間を死人の首に見せかけた
 ・影の方向がおかしいのは合成の疑いがある
 ・日光写真で焼き付けたものでないのに日光写真について述べる(しかも間違っている)
 ・様々な写真サイズがあるのはおかしい
などです。
これらがいかに迷論であるかはそれぞれの個所で述べたり、指摘をリンクしていますのでお読みください。

<参照:写真検証サイト>
ニセ写真攻撃−斬首編
" 南京事件 「証拠写真」を検証する" を検証する


ここでは著者は、土盛りか脚立がなければ撮影不能だ、といっています。
これもかなり好い加減なデマだと思います。

たかが『脚立』のことに過ぎないではないか、と思うかもしれませ。しかし筆者は、「偶然に行き当たりばったりに盗撮されたものではなかった」といって、暗に日本兵が撮影した可能性を否定するために、小道具として『脚立』を持ち出しているのです。

脚立を使ってのプロ・カメラマンによる撮影ともなると、軍に依頼された「任務」または「業務」となりますから、焼き増しプリントが流出するはずもありません。そうすると、この公開処刑と撮影を企画したのは、この写真を最終的に手に入れた中国宣伝部の可能性が高い。はっきり述べてはいませんが、そういう方向に読者を誘引しようとしています。

したがって、「脚立を使わなければ撮影は不可能」という単純なウソも、キッチリおさえて置かなくてはなりません。



では冷静に再検証!

平行な壁板の見え方から、目の高さがわかります。


では、写真Bのカメラの高さを図を書いて推定して見ます。


幸いにも右側の兵士達は、壁のように列をなしています。
足の連なり、顔の連なりが、おおむね水平な線だとかんがえると、
それぞれに引いた補助線の交点、そこから引いた水平線が、
こちら側のカメラの高さと同じレベルを示します

結果、
写真Bは、土手の上にたった人間の腰の上ぐらいが、カメラの高さだと推定できます。
つまり、カメラのあるこちら側にも土手が続いていると考えるのが順当です。
おそらく、こちら岸が"く"の字に曲がっているので、右側の兵士の列も見えたのでしょう。

※ カメラが腰の上の位置というのは、ファインダーを上から覗き込む蛇腹カメラの可能性が高いのです。

もし、土手の上にさらに脚立を立て、その上からカメラを構えたら、
右列の人物は頭から見下ろすので顔が見えなくなるはずです。
写真12のカメラの高さも同じです。脚立の必要はありません。

残るは写真A(写真13)です。


かなり急角度の俯瞰写真です。しかし、写真12や写真Bを撮影したカメラ位置からも俯瞰写真がとれることは、写真Bの一部を切り取った次の写真からも分かります。





写真Aは、これよりきつい俯瞰に見えます。
しかし、もし下図のように写真Bに較べて写真Aの刺殺者がカメラに近ければ、カメラの高さを変えなくても俯瞰角度は強くなります。



                図はあくまでも想定です。


こういうことから、写真A(写真12)についても土手の上からでも撮影可能、脚立は必ずしも必要ない、ということになります。つまり、
カメラは被写体から離れた高い位置にあることが、写真12、写真13、写真A、写真Bからいえる。私たちの経験からすると、盛り土または脚立を利用して、その上で撮らなければ、このような写真は撮影不可能だ。
は否定され、日本軍の兵士でもこれらの写真を撮影することができ得た、ということになります。



写真Aの撮影ポジションは?


ここで気になるのは、写真Aと写真Bの部分とは違うアングル、違う場所のように見えることです。
それには、二通りの可能性が考えられます。

1、写真12,写真Aと同じ位置のカメラが、レンズの方向を左に向け、しかも下向きにして撮影した。(一番下の図参照)

2、写真Bの奥の土手の上から撮影した。(次の写真図参照)


ここで留意しておかなくてはならないのは、時間経過で人物もアクションも変わっている、ということと、観察できる写真のフレームの外にも世界がある、ということです。

そこで、
写真CとDも加えて刑場全体を予想してみましょう。
これは南京で衛生伍長を勤めていた阪本多喜二さんの撮影です。
東中野氏は両方とも左側をトリミングしましたが、そこには日本兵の姿があったのですね。余りにもショッキングな近接撮影です。





は捕虜、は「日本兵」、はカメラ、長細いのは、寝そべってる兵士
下方のカメラは、写真12、写真B、の撮影位置です。



写真Aは、写真Bと同じ位置のカメラで撮ったのか、先に説明したように別のカメラで撮ったのか特定はできません。しかし、この堀が手前が広く奥が狭いことを考えれば、手前に広い俯瞰対象をもつと言う意味で、同じカメラによる可能性も否定できません。その場合、写真Aは、写真Bよりも俯瞰度を高めることが可能です。被写体が近ければ、カメラの向きはより下向きになります。


なお、この濠は、死体埋葬用にしては幅が広すぎます。道路工事の現場を処刑場として利用した可能性もあるのではないかと思われますが、検証を待たなければなりません。

 

これらの写真の検証において、重要なことは、
日本兵による撮影が行われたこと。したがって、
公開処刑は、日本軍が企画し日本軍が実施した、という事実です。
写真が胡散臭いのではなく、
事実が、限りなく胡散臭く残忍なのです。

なお、以下は東中野氏ら著者による、写真C及び写真Dのトリミングです。



なるほど!
トリミングって、写真の本質を消し去ることができるのですね。


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