「百人斬り」東京地裁判決(部分-009)

| 前に戻る | 判決文の構成 | 凡例 | Searchに戻る | file-listに戻る | 次に進む |

《争点2:本多著書は名誉毀損や敬愛追慕の情侵害になるか》 m&s
      • (被告柏の主張)
        •  「南京大虐殺否定論13のウソ」は,別表記事番号三(*)において,上記(1)の被告柏の主張記載のとおりの論評を記載したものであり,それらは,両少尉に対する人格的非難を伴うものではない。
           また,当該記事は,「百人斬り競争」の実行者を「NとMの二少尉」と紹介し,本文,引用文,注記を問わず,すべて「M」「N」の匿名で表記し,両少尉の出身地,経歴,所属部隊等を一切記載せず,両少尉の遺族である原告らにも言及していないから,一般読者において,「M」を向井少尉,「N」を野田少尉と認識することは不可能であり,両少尉の名誉を毀損するものとはいえず,遺族である原告ら固有の名誉毀損についても,その前提を欠くものである。
           さらに,その点を措くとしても,「南京大虐殺否定論13のウソ」の出版当時,「百人斬り競争」の当事者たる「M」「N」が両少尉であることが一般読者に知れ渡っていたこともないから,一般読者において,原告らを「M」「N」の遺族であることを推知することも不可`能であって,原告らの名誉毀損も成立し得ない。
        •   原告らは,原告らの両少尉に対する敬愛追慕の情が違法に侵害されたと主張するが,そもそも,死者の名誉毀損とは別に遺族の敬愛追慕の情の侵害としての不法行為が認められる余地があるとしても,その範囲は,虚偽虚妄をもって死者の名誉毀損が行われ,遺族の敬愛追慕の情等の人格的法益を社会的に妥当な受忍限度を超えて侵害した場合に限定されるものである。
           これは,死者についての記述が,往々にして歴史的事象への考察,検証,論評の性格を持つものであり,その記述に遺族が不快感を抱いたことから,当該記述や当該出版が不法行為となれば,言論表現の自由や歴史研究,発表の自由が不当な制約を受けるからである。

          「南京大虐殺否定論13のウソ」の別表記事番号三(*)については,上記(1)の被告柏の主張欄のとおりの論評を記載したものであり,両少尉の名誉を毀損するものではないし,被告本多及び被告朝日が主張するとおり,「百人斬り競争」や捕虜・民衆虐殺は事実である。
           また,遺族の敬愛追慕の情は,死の直後に最も強く,その後は時間の経過とともに軽減するものであり,死者についての事実は時間の経過とともに歴史的事実の性格を強めていくのであって,こうした歴史的事実については,史料考証等による歴史的探求やそのための表現活動の自由が優位に立つものと考えなければならないところ,上記記事は,両少尉の死後52年を経過した時点で出版されたものであって,その趣旨,内容は,まさしく史料考証による歴史的探求であり,原告らの両少尉に対する敬愛追慕の情を不法に侵害するものではない。
        •  原告らは,プライバシー権侵害についても主張するところ,「南京大虐殺否定論13のウソ」では「原告らが南京軍事裁判で処刑された『M』『N』少尉の遺族である」ことについて,一言も言及しておらず,原告らを「M」「N」少尉らの遺族とも特定できないのであるから,原告らのプライバシーを侵害する余地はない。
m&s

| 前に戻る | 判決文の構成 | 凡例 | Searchに戻る | file-listに戻る | 次に進む |

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送