「百人斬り」東京地裁判決(部分-025)

| 前に戻る | 判決文の構成 | 凡例 | Searchに戻る | file-listに戻る | 次に進む |

《紹介:南京軍事裁判検察官への野田少尉の答辮書11月15日》
      •  両少尉は,いずれも昭和22年ころ,戦犯として身柄を拘束され,巣鴨戦犯拘置所から南京軍事裁判所に押送され,同年11月ころ,南京軍事裁判の検察官から審問を受けた。両少尉は,検察官からの審問を補足する形で,概略以下のような趣旨の答辮書を提出した(甲23ないし26,76,103,弁論の全趣旨)

        • (ア) 野田少尉の民國36年(昭和22年)11月15日付け答辮書(甲23)

          「  昭和12年11月,無錫付近において,向井少尉とともに浅海記者に会い,たばこをもらい互いに笑談戯言した。これが浅海記者と会った第1回目である。浅海記者は,当時,特別記事がなくて困っており,『あなた方を英雄として新聞に記載すれば,日本女性の憧れの的になり多数の花嫁候補も殺到するでしょう。もし新聞に記載されれば郷士に部隊の消息をも知らせることになり,父母兄弟親戚知人を安心させることになるでしょう。記事の内容については記者に任せてください。』と言った。  」

          「  私は,まさかそのような戯言が新聞に載るとは思ってもおらず,かつ笑談戯言であるために意に止めずにほとんど忘れていた。その後,同年12月ころ,麒麟門東方で戦車に搭乗した浅海記者と行き違ったが,これは浅海記者と会った第2回目である。そのとき,浅海記者は,早口で,『百人斬競争の創作的記事は日本国内で評判になっていますし,最後の記事も既に送りました。いずれあなたも新聞記事を御覧になるでしょう。』と言い,戦車の轟音とともに別れた。このとき向井少尉は不在であった。  」

          「  私は,翌年の昭和13年2月,北支でその記事を見たが,余りにも誇大妄想狂的であって,恥ずかしく思った。  」

          「  『百人斬り競争』の記事は,誇大妄想狂的で日本国民の志気を鼓舞しようとするための偽作であることは浅海記者を召喚して尋問すれば明瞭であり,これが事実無根の第一の理由である。  」

          「  浅海記者と会見したのは無錫付近と麟麟門東方との2回である。それにもかかわらず,新聞記載の回数は4回か5回であって,会見の回数より多いのは何を意味するか。記者が勝手に創作打電したことは余りにも明瞭であり,これが事実無根の第二の理由である。  」

          「  私と浅海記者が麟麟門で会合したとき,向井少尉は不在であったにもかかわらず,新聞記事には二人で会見談話したように記載しており,これが事実無根の第三の理由である。  」

          「  私の所属していた冨山大隊は,常州--陽--容--湯水街道では全く戦闘をしていなかった。特に,冨山大隊(歩兵一個中隊と歩兵大隊砲小隊を除く。)は,丹陽付近から北方に遠く迂回し,本隊に遅れたため,草場部隊の予備隊となり,本隊に追及すべく急行軍を実施中であった。このように,戦闘を実施せず,また,常州,丹陽,句容に入らず,しかも百人斬りの記事資料を記者に与えたこともなかったにもかかわらず,百人斬りの累計が逐次常州,丹陽,句容の諸地点において向上増加するかのようなことは常識で考えてもばかげたことであることが明瞭であり,これが事実無根の第四の理由であって,冨山大隊長を召喚して尋問すればこのことは明瞭となる。  」

          「  向井少尉は,昭和21年7月1日,東京において,国際検事団検事の尋問を受けた際,事実無根であることを認められ,即刻不起訴処分に処せられて釈放された。私は,本件に関して向井少尉と同一問題であるから,同様に事実無根の認定を受けたものと信じて現在に至っている。  」

          「  冨山大隊は昭和12年12月12日ころ,麟麟門東方において,行動を中止し,警備のため,湯水東方砲兵学校跡に集結し,同月13日ころから昭和13年1月7,8日ころまで駐留し,その後北支へ移動した。その駐留の間,将兵は外出禁止で私はもちろん外出したこともない。当時,私は,副官の職にあったので,陣中日誌及び戦闘詳報の作成,功績調査,日々の命令会報の伝達,北支移動の準備等のため,激務多忙であり,到底外出不能で南京に行く余裕は全くなかった。  」

          「  私は,昭和12年9月から昭和13年2月まで,冨山大隊の副官にして常に冨山大隊長の側近にあって,戦闘の間は作戦命令の作成,上下への連絡下達,上級指揮官への戦闘要報の報告等を,行軍露営の間は,行軍露営命令の作成下達,露営地の先行偵察,露営地の配宿,警戒警備線の実地踏査,弾薬,糧秣の補充及び指示,次期戦闘の準備等で忙しく, 百人斬りのようなばかげたことをなし得るはずがない。  」

| 前に戻る | 判決文の構成 | 凡例 | Searchに戻る | file-listに戻る | 次に進む |

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送