原文は http://www.env.go.jp/chemi/report/h17-11/index.html
本書は、平成17年6月に公表した「茨城県神栖町における汚染メカニズム解明のための調査 中間報告書」について、@平成17年7月に掘削エリア(東西24m×南北12m)の土留め矢板西端の外側部に おいて追加の掘削調査を実施した結果の追記、A(財)化学物質評価研究機構からの化学剤関連化合物分析結果の最終報告書の提出を受けて、ジフェニルアルシン酸等の分析結果のデータ修正の反映、を行い、中 間報告書の追補版としてとりまとめたものである。なお、中間報告書からの追加、修正内容は、以下の通りである。
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追補版 目 次
追 補 版 中間報告書の該当個所 摘 要
1. 掘削作業全般 1 頁 3.1 掘削作業全般 3-1 頁 掘削エリア西端外側部での掘削調査を追記
1.1 掘削調査作業手順の概要 2 頁 3.1.1 掘削調査作業手順の概要 3-2 頁
1.2 掘削作業の実施状況 3 頁 3.1.2 掘削作業の実施状況 3-3 頁 西端外側部の掘削について追記、写真追加(コア抜き写真の日付訂正)
2. コンクリート様の塊 4 頁 3.2 コンクリート様の塊 3-5 頁 西端外側部の塊について追記、写真追加 ジフェニルアルシン酸最大濃度の値修正(4,900mg/kg→4,800mg/kg)
図2.1 コンクリート様の塊の分布状況 5 頁 図3.2.1 コンクリート様の塊の分布状況 3-6 頁 西端外側部の塊について図、写真追加
2.1 コンクリート様塊の総ヒ素分析結果 6 頁 3.2.1 塊中のジフェニルアルシン酸、総ヒ素等の分析結果
2)コンクリート様塊の総ヒ素分析結果 3-8 頁 西端外側部の塊について追記
2.2 化学剤関連化合物分析結果 8 頁 3)化学剤関連化合物分析結果 3-12 頁 西端外側部の塊について追記、ジフェニルアルシン酸最大濃度の値修正(4,900mg/kg→4,800mg/kg)、ビス(ジフェニルアルシン)オキシド溶出量定量下限値修正
2.3 コンクリート様の塊中に元々存在していたヒ素総量、ジフェニルアルシン酸総量の推計9 頁 4)コンクリート様の塊中に元々存在していたヒ素総量、ジフェニルアルシン酸総量の推計 3-13 頁 西端外側部の塊分合算、ジフェニルアルシン酸最大濃度の値修正(4,900mg/kg→4,800mg/kg)
2.4 コンクリート様の塊の中から発見された缶、瓶等10 頁 3.2.2 コンクリート様の塊の中から発見された缶、瓶等 3-14 頁 西端外側部を図に追加
2.5 コンクリート様の塊の白色物質、赤色物質等分析結果 12 頁 3.2.3 コンクリート様の塊の鉱物組成及び白色物質、赤色物質等 分析結果・コンクリート様塊中の赤色物・T−3下側塊中のガラス瓶の白色粉・化学剤分析結果 3-23、24 頁 化学剤分析結果の値の修正、ビス(ジフェニルアルシン)オキシド溶出量定量下限値修正
3. 掘削調査の際に発見された異物 13 頁 3.3 掘削調査の際に発見された異物 3-33 頁 西端外側部について追記
3.1 飲料用空缶等 14 頁 3.3.1 飲料用空缶等 3-34 頁 〃
4. 掘削現場の土壌の汚染状況 15 頁 3.4 掘削現場の土壌の汚染状況 3-37 頁 〃
4.1 掘削土壌量 15 頁 3.4.1 掘削土壌量 3-37 頁 〃
4.2 土壌総ヒ素分析結果 16 頁 3.4.2 土壌総ヒ素分析結果 3-38 頁 〃
4.3 土壌化学剤関連化合物 19 頁 3.4.3 土壌化学剤関連化合物 3-40 頁 化学剤分析結果の値の修正、西端外側部について追記、
5. 地下水モニタリング 22 頁 3.7 地下水モニタリング 3-89 頁
5.1 地下水位測定結果 22 頁 3.7.1 地下水位測定結果 3-89 頁 7 月末までのデータ追記
5.2 地下水総ヒ素等分析結果 23 頁 3.7.2 地下水総ヒ素等分析結果 3-90 頁 〃
6. コンクリート様の塊の性状・投入方法 25 頁 8.1.1 コンクリート様の塊の性状・投入方法 8-1 頁 ジフェニルアルシン酸最大濃度および量修正( 4,900mg/kg →4,800mg/kg)
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汚染源が存在する可能性の高いA 井戸の南東90m 地点のNO.123 調査孔を含む東西方向24m×南北
方向12m×深さ4m の範囲について掘削調査を実施した。
図1.1 に掘削現場の平面および断面の概略図と南側から俯瞰した写真を示す。
図1.1 掘削現場の平面・断面模式図および写真
本掘削部分(12m×24m)については、4m メッシュごと、深さ0.5m ごとに掘削面表層より10cm 程度ま での深さの土壌を採取する。4m メッシュ内の4 点から採取し、風乾はせずに4 点分を均等混合して1 検体を得る。得られた検体は、北西方向を1 とし時計回りに4 まで枝番号を付け識別する(例:bB3 −3)。トレンチ掘削部分の中心(2m×2m)については、1m メッシュに区切って均質に土壌をサンプリング して1検体を得る。標識記号は、北西方向を1 とし時計回りに4 まで枝番号をつける(例:T6-4)。
掘削エリアのすぐ北に設置した3 カ所のモニタリング井戸からは、矢板打設前に1 回、以降掘削開始ま では1 週間ごとに1 回、掘削開始後は毎日(掘削作業の無い日を除く)、深さ8m から採水して総ヒ素の分 析を行うとともに水位の連続測定を行う。 また、掘削調査開始後、3 カ所のモニタリング井戸で1 週間に1 回、深さ8m から採水してジフェニル アルシン酸等の分析を行う。
図1.2 掘削手順の平面・断面模式図
南東90m 地点の掘削調査にて発見されたコンクリート様の塊から高濃度のジフェニルアルシン酸 が検出された。この塊中のジフェニルアルシン酸、ヒ素濃度等を調べることで、塊自体の物性、性 状を明らかにする。
コアサンプルの総ヒ素の分析結果(可搬式蛍光X線分析装置による)を表2.1 に、コアの採取位置を 図2.2 に示す。 西端外側コンクリート様塊(破砕除去したものより無作為に採取)の分析結果を表2.2 に示す。
コンクリート様の塊より最高11,000mg/kg の総ヒ素、最高4,800mg-As/kg-wet のジフェニルアルシン酸 が検出されている。投入された当初のコンクリート様の塊中の濃度をこの値と仮定し、元々存在していた 総量(最大値)を推計する。
掘削時の計量データよりコンクリート様の塊の総質量を以下のように推計した。大きな塊以外の小塊、 小片については、表備考欄の仮定により推計した。
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表2.4 コンクリート様の塊の質量推計結果
コンクリート様塊 質量 (kg) 備 考
塊T 20,280
塊U 5,600
塊V 970
GL-2.5m 以深掘削時の粗大物 2,920
GL-1m 以深の小塊、小片 14,280 掘削粗大物の1/2 と仮定
GL-1m 以深の土壌中の小片 8,290 掘削土量の1%と仮定
塊U−A 27,760
塊W 6,520
総 計 86,620
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また分析は、2mm 以上の骨材成分を除去した上で行っているため、骨材成分の割合を30%とすると、
正味の対象成分 = 86,620kg×(1−0.3) = 60,630kg
元の総ヒ素濃度を11,000mg/kg、含水率20%として、
総ヒ素総量 = 60,630kg ×(1-0.2)× 11,000mg/kg =530kg-As
ジフェニルアルシン酸(DPAA)濃度を4,800mg/kg-wet(ヒ素換算値)として、
DPAA 総量=60,630kg × 4,800mg/kg =290kg-DPAA(ヒ素換算値)
=1020kg-DPAA
コンクリート様塊以外に土壌中又はコンクリート様の塊の中に含まれていた異物を整理し、埋め 戻し方法等に関する情報を得る。
総ヒ素と化学剤関連化合物の含有量・溶出量を分析し掘削エリアの土壌の汚染状況を把握した。
====文字プール==== 表4.1 掘削土壌量一覧表 土壌粗大物 合計重量kg 合計重量kg 処理前袋数 69 H16.12.25〜27 79,130 1,590 小計79,130 1,590 トレンチT1 (±0〜-0.5m) H16.12.24〜25 37,140 少量(土留めに含む) トレンチT2 (-0.5〜-1m) H16.12.26〜27 31,220 160 トレンチT3 (-1〜-1.5m) H16.12.28 27,950 2,970 トレンチT4 (-1.5〜-2m) H17.1.5 22,860 3,610 トレンチT5 (-2〜-2.5m) H17.1.7、11 5,960 120 本掘削東側1層目(E1) (±0〜-0.5m) H17.1.8〜9 94,690 本掘削西側1層目(W1) (±0〜-0.5m) H17.1.9〜11 137,560 本掘削東側2層目(E2) (-0.5〜-1m) H17.1.12〜13 91,090 − 本掘削トレンチ東側延長3層目(E3) (-1〜-1.5m) H17.1.13 33,190 570 本掘削トレンチ東側延長4、5層目(E4、5) (-1.5〜-2m) H17.1.14 41,850 630 塊T周辺(-0.5〜-3m) H17.1.14〜15 77,950 4,110 本掘削西側2層目(W2) (-0.5〜-1m) H17.1.15、17〜18 114,400 5,590 本掘削西側3層目(W3) (-1〜-1.5m) H17.1.19〜20 93,480 3,780 本掘削東側3層目(E3) (-1〜-1.5m) H17.1.20〜21 56,100 1,500 本掘削東側4層目(E4) (-1.5〜-2m) H17.1.26〜27 75,100 2,970 本掘削西側4層目(W4) (-1.5〜-2m) H17.1.27〜28 112,790 3,720 本掘削東側5層目(E5) (-2〜-2.5m) H17.1.31〜H17.2.1 78,010 1,500 本掘削西側5層目(W5) (-2〜-2.5m) H17.2.1〜2 106,350 3,080 小計1,237,690 35,000 塊V−1 H17.2.9 − 970 塊U−1 H17.2.22〜23 − 5,600 塊T−2 H17.2.23 − 4,740 塊T−3上部H17.2.23 − 3,190 塊T−1 H17.2.25〜26 − 6,440 塊T−3下部H17.2.25 − 5,910 塊U−1周辺土壌H17.2.22〜23 18,020 − 塊周辺土壌H17.2.23 31,440 − 塊周辺土壌H17.2.25 6450 − 塊周辺土壌H17.2.26 41,070 − 小計96,980 26,850 @ブロック水面下掘削H17.3.1 38,970 2,140 @Aブロック水面下掘削H17.3.2〜3 36,650 780 H17.3.2〜3 H17.3.24 Bブロック水面下掘削H17.4.6 73,490 − ABブロック水面下掘削H17.3.2〜3、H17.4.6 69,260 − Dブロック掘削(-2.5〜3m) H17.6.29 43,000 − 小計331,940 2,920 西上4 H17.7.6 26,250 − 西上3 H17.7.6〜7 31,230 − 西上2 H17.7.7 28,300 − 西上1 H17.7.7〜8 28,610 − 西下4 H17.7.11 17,560 − 西下3 H17.7.11 2,520 − 西下2 H17.7.11〜12 24,930 − 西下1 H17.7.12 28,310 − 西1(3.1m以深) H17.7.13 4,190 − 小計191,900 0 塊U-A H17.7.12〜13 − 27,760 塊W H17.7.13 − 6,520 小計0 34,280 総計1,937,640 100,640 土留め時フレコン土壌 690 掘削位置掘削日 − @Aブロック(3/2〜3) +Cブロック(3/24)水面下掘削 70,570
コンクリート様の塊等に含まれているジフェニルアルシン酸は、旧軍がくしゃみ剤等として利用してい たジフェニルシアノアルシン、ジフェニルクロロアルシン等の毒ガス成分が分解したものではなく、ジフ ェニルアルシン酸そのものである可能性が極めて高い。ジフェニルアルシン酸約290kg(ヒ素換算値)が 約87トンのコンクリートのようなものに混ぜられて投入された可能性が高い。
コンクリート様の塊は、当初の掘削範囲(東西24m×南北12m)の中で、大小あわせて3個体発見さ れており、その大きさと重量は、東西10m×南北8m×厚さ2m、20.3トンと東西1.5m×南北4m×厚さ 2m、5.6トンと東西2m×南北1m×厚さ0.5m、0.97トンであった。さらに西端外側部の東西3m×南北 3mの範囲で行った追加掘削においても、2つの塊が発見され、その内の1つの大きさと重量は、東 西2m×南北5m×厚さ1.5m、27.8トンで、当初発見された西端の塊と連続する形で存在していた。他 1つは東西1.5m×南北3.5m×厚さ0.4m、6.5トンであった。これら5つの塊以外にもコンクリート様の 小片が多数発見されており、これまでに撤去したコンクリート様の塊の総量は、約87トンと推計され る。これらはすべて同一層準から発見されていることから、同一時期に投入された可能性が高い。
最も大きなコンクリート様の塊は10m×8m×2m程度であり、固まった状態のものを搬入することは 現実的に困難であることや、コンクリート様の塊の形状が不均一であることから、現場で流し込まれた ものと考えられる。
コンクリート様の塊及び周辺環境からは、これまでのところ毒ガス成分(マスタード、ルイサイト、 ジフェニルシアノアルシン、ジフェニルクロロアルシン等)は全く検出されず、またあか剤の筒等の残 骸といった毒ガス弾を疑わせるようなものも発見されなかった。あか剤(ジフェニルシアノアルシン、 ジフェニルクロロアルシン)が投入されていたとすると、ジフェニルアルシン酸への分解経路で発生し、 分解速度が速くないビスオキシドが相当量検出されるとも考えられるが、ほとんど検出されていない。 このため、ジフェニルアルシン酸そのものが投入された可能性が極めて高い。コンクリート様の塊の モルタル部分からは、最高で11000ppm(可搬式蛍光X 線法による)の総ヒ素、4800ppm(ヒ素換算値) のジフェニルアルシン酸が検出された(水溶出量)。また、コンクリート様の塊に散在する小さな白色 物や、コンクリート様の塊の中から発見されたビン中の白色粉からも数千ppm(ヒ素換算値)のジフェ ニルアルシン酸が検出されている。これらのことから、当初のジフェニルアルシン酸の濃度は少なくと も数千ppm 以上あったことが推察される。また、現在確認された最高のジフェニルアルシン酸濃度が、 コンクリート様の塊全体に分布していたと仮定し、当初コンクリート様の塊に含まれていたジフェニル アルシン酸の総量を推計すると、290kg程度になった。
コンクリート様の塊自体の成分、構成、状態等を確認したところ、すべて同様の構成物と組成からな っており、同一の作成物であると考えられる。また掘削時の観察およびボーリングコアの詳細観察の結 果、コンクリート様の塊内部の構造は一様でなく、土壌(粘性土等)の薄層を挟んでおり、コンクリー ト様の塊内部の粘性土は塊周辺の粘性土と同様のものであることが分かった。また、コンクリート様の 塊自体は、空隙が多く土壌分も含んでおり、一般的なコンクリートと比べて軟質でもろい状態であった。
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