ヒンドゥー至上主義における終末論の言説1 第四期石器人 2002/03/15 21:18:06
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ヒンドゥー至上主義における終末論の言説1 |
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第四期石器人 <irssnyejbj>
2002/03/15 21:18:06 |
ヒンドゥー至上主義における終末論の言説(1)
ヒンドゥーにおける終末はカリ・ユガと呼ばれる。 カリ・ユガとはヒンドゥー教による一宇宙時間を構成する宗教上の時間区分でクリタ・ユガ、トゥレータ・ユガ、ドゥヴァーパラ・ユガとカリ・ユガと合わせてマハ・ユガ呼ぶ。それぞれの時代を経て、カリ・ユガの時代には悪徳・暴力・無知・貪欲に満ちあふれ世界は滅び、マハ・ユガの一区切りが終了し、再びクリタ・ユガへと巡る。と考えられている。マハ・ユガは432万年で一巡りし、千回繰り返すことによりブラフマー半日が終了するとされる。 突然このようなことを述べたのは、とほほさんの投稿に触発されて、最近のインドにおけるヒンドゥー・ナショナリズムの理論武装をヒンドゥー教の終末思想から私の知っていることを紹介したいと思ったからである。
ヒンドゥー・ナショナリズムにおけるカリ・ユガの言説。 1、BJP(Bharatiya Janata Party:インド人民党)の場合 BJPの指導者の中でも最もサンスクリット文化を強く帯びた人物でサドゥヴィ・リタンバラと言う人物がおり、演説にも繰り返しサンスクリット文化を引用する。彼女(女性であり政治家)は16歳の時に霊感に目覚め求道の道に入った女性修行者でなおかつ、インド連邦下院議員である(1999年当時) 1991年「ヒンドゥー・バックラッシュ」がまさに最高潮の時の演説で、ヒンドゥー・ナショナリズムの運動が北インドのアヨードヤと言う町に立つイスラム寺院がラーマ神の誕生地におけるラーマ寺院を破壊して立てられた物であるとして、攻撃の対象になっていた。事実、1992年にヒンドゥー教徒の暴徒によって破壊される。このような状況下でヒンドゥー教徒を解放する運動としてなされる。
「次の政府をラーマへの献身者の政府とすべし。ヒンドゥー達よ、ラーマの生誕地に寺院を建築させたいのなら、次の選挙であなた達は団結しなければなりません。ヒンドゥー達よ、もし貴方が目覚めないのなら、ヒンドゥーにとって重要な崇拝の対象の一つである牝牛があらゆる場所で屠殺されるでしょう。私たちの賢者が隠遁していく中、あなた達は聞くことになるでしょう『アッラーは偉大なり』の詠唱を。こうした惨状の責任はあなた達にあることになります。歴史はヒンドゥーを臆病者と言うでしょう。挑戦を受けなさい。我々の時代(カリ・ユガ)の歴史を変えなさい。」 また、 <ラーマ生誕地運動に関わっていた人々の示威行進に対する治安部隊による発砲という1990年>11月9日の事件ののち、多くのヒンドゥーの若者が私の所に来て言いました。『シスター、武器を下さい。ムスリム野郎のムラヤム<ムラヤム・シン・ヤダヴ。当時の州首相で、先に発砲した>をしとめてやります。』私は言いました『虚勢の男をしとめるのに、どうして弾を無駄にする必要がありますか。』ラーマーヤナの話の中で、ラーマは矢を放つのに疲れ果ててしまいました。悪の王であるラーヴァナの首は一つ落ちては、またすぐ別の首が現れてきたからです。ヴィビシュナは言いました『主よ。頭を切り落とすことではこの罪ある者は殺せません。奴の命は臍にあるのです。』我が兄弟ヒンドゥーよ。こうした指導者らの命は、彼らの権力の座にあるのです。彼らから権力を奪い取りなさい。そうすれば彼らは死ぬ、自ら死ぬでしょう。彼らは不能な虚勢者にすぎません。ラーマがアヨードヤから追放されたとき、多くの市民が彼に追随して森へと入り、一夜を過ごしました。朝になりラーマは言いました。『アヨードヤの男女よ、家に帰りなさい。』男も女も帰っていきましたが、一群のふたなりだけが残りました。男でも女でもない彼らは尋ねました。『主よ、貴方は私どもには何の指示もお与えになりませんでした。』ラーマは情け深い方です。こうおしゃいました。『未来のカリ・ユガに置いて、お前達はわずかの間統治者となるだろう。』男でも女でもないこれらの者たちこそ、今日のあなた達の支配者なのです。」(ibid.,210-11)
暴力の直接行使こそ否定したが、明らかに過激で、民族間憎悪・偏見に満ちた扇動的演説である。しかし、このBJPはより過激なRSSの政治部門として誕生した組織なのである。 −−−−−−(2)へ続く−−−−−−−−−− |
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第四期石器人 <irssnyejbj>
2002/03/16 19:15:10 |
ヒンドゥー至上主義における終末論の言説(2)
2RSS(Rashtriya Swayamsevak Sangh:民族義勇団)の場合 ヒンドゥー至上主義の活動に置いて宗教部門・政治部門まで兼ね備えた最大のプラットホームを持つこの団体はBJPをインド連邦下院に第一党として送り出している。BJPはRSSの強いコントロール下に置かれている。 RSSの機関誌「オーガナイザー」からこの集団の終末思想感を見ていきたい。 1997年4月13日付の小論スダルシャン(Sudarshan 1997)は次の一文で始まる。 「この10年、すなわちカリの時代(the
Age of
Kali)の終わりであり、クリスチャンにとっての20世紀の終わりでもあるこの10年は、急速な変化の時代である。」 20世紀の終わりをカリ・ユガの終了期と捉え、キリスト教にまで言及されている。RSSのナンバー・スリーK.S.スダルシャンはこの21世紀をインドやヒンドゥーとイスラムとの関係だけでなく、全地球規模での暴力の蔓延・秩序の崩壊・知的バランスの崩れ、社会がバラバラになり、宗教セクトが雨後の竹の子のように発生する時期として特徴づけられている。 更にこの詳論の中でカリ・ユガの終了の特徴を列挙している。 共産主義の崩壊・文明の衝突・各地でのエスニック紛争・地域のブロック化・グローバリゼーションに名を借りた覇権主義の拡大・第三次世界大戦の勃発の可能性。等である。 スダルシャンはこれらの否定的な現象は過渡的な物であり、その根本には「科学によるパラダイムシフト」すなわち「物質主義的消費社会」を形成した還元主義的方法論と機械論的世界観の衰退である。科学は肉体と精神を分離させ現実から乖離してしまった。しかし、今世紀最初の四半世紀に、こうしたパラダイムに大きな転換がもたらされた。相対性理論やホーリスティックな世界観の登場である。それにより、全ての事物は相互関係的に、全体性を持って研究されるようになり、「ヒンドゥー的思考法」(永遠の真理)に目覚めるようになった。と、している。 そして、最後に次の文章で締めくくられている。 「我々は、全人類のために救いの道を示そうとしているにも関わらず、目下のところ、破壊的で党派主義的で過激なグループと見なされている。これはいわれのない避難である。我々は今こそ(すなわち、カリ・ユガの終末にあたる現在こそ)攻撃に打って出ねばならない。『激烈な/殺人的な本能(the killer instinct)』をもってあらゆる戦線において戦いに加わろう」
3VHP(Vishwa Hindu Parishad:世界ヒンドゥー教会)の場合 VHPはRSSの宗教活動部門で1964年にRSSにより設立された。ヒンドゥー至上主義に共感するヒンドゥー宗教家の全国的なフォーラムである。VHPは機関誌として「ヒンドゥー・ヴィシュヴァ」を発行しており、創刊25周年記念号に中央本部において特に高名な宗教家達の組織(ダルマーチャーリヤ)をまとめる責任者を勤めていたT.R.シャルマが寄せた小論が掲載されている。(Sharma1990) −−−−−−−−−−−−3へ続く−−−−−−− |
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第四期石器人 <irssnyejbj>
2002/03/17 17:51:07 |
ヒンドゥー至上主義における終末論の言説3 VHPは諸活動を列挙し、(各種の会議・ラーマ生誕地運動・全国ラリー・ムスリム、クリスチャンの改宗・権利獲得運動・ヒンドゥー寺院にタイする行政の管理を低減させる運動・牝牛保護運動・大規模な宗教儀礼の開催)これらのプログラムによって、VHPは「奴隷の時代」(イスラム・ヨーロッパ植民地支配の時代)に、社会的活動(貧者救済など)に携わることを可能にした。と、自画自賛し、自己解釈さえている。 「歴史が目撃したところによれば、我々の国に災厄が訪れたとき、いつも予言者、聖者、哲学者が現れて、守ってくれたものである。−−−−−略−−−−−−そして、『ダルマ』再構築のために現れた。そして今日、考え方の差違を乗り越えて、それと同様の役割を果たすことが、指導者、予言者らには期待されている。彼らの声と苦行の力に鑑みたとき、ヒンドゥー社会は「この暗黒の時代」にあっても光を持ち続けることが出来る、この事は疑えない。」(ibid.,p.68) この中で「今日」を「暗黒の時代」(カリ・ユガ)とし、VHPの指導者が歴史的な「賢者」の役割を担って、カリ・ユガを変化させ、ネイション・アイデンティティーを守る物とされている。
以上、RSSの組織とその思想を見てきたが、その思想は宗教的と言うより、通俗的で、善悪二元論に基づいた勧善懲悪しそうである。RSS第二代総帥は1972年に「人間の中には神的自己とサタン的自己の二つが存在する」と語り、社会主義・共産主義・民主主義を「神的な力、神的な美質は何ら見いだされない。」としている。 そして、「悪」の撲滅を訴えかけ続けている。 ヒンドゥー至上主義者は歴史をただ単に被害者意識の強調と肯定的独自性(歴史の重層性への関心がない)の為に利用し、本来のヒンドゥーが持っている「永遠なる回帰としての時間の連続」の一部である「カリ・ユガ」をただの彼らの信ずるところの善と悪の戦いの口実として利用している。 |
└投稿感謝 とほほ 2002/03/20 14:07:31 ツリーへ
Re: ヒンドゥー至上主義における終末論の言説1
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とほほ <yclfglvbxs>
2002/03/20 14:07:31 |
投稿感謝 私は一応カトリック教徒なので(^^; ブディズム思想に疎いです、勉強させてください。今起きている事件の根底を考える上で
第四期石器人さん
の投稿は非常に考えさせてくれました。こんなマイナーな掲示板だけでの投稿はもったいないと恐縮しております。
ブラフマと言うのはそう言う意味だったのですね。 この言葉は手塚治の「ブッダ」のなかで「絶対真理」と解釈され描かれていまして、そう言う観念なのだ、と理解してました。
また、私が中学生の頃古典落語に凝った事がありまして(^^; 「じゅげむ」を丸暗記したものです(笑) じゅげむ
の中に出てくる「時間」に対する感覚に仏教への関心を持った事もありました。 |
└実は私は神学には疎い(汗) 第四期石器人 2002/03/21 19:08:36 ツリーへ
Re: 投稿感謝
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第四期石器人 <irssnyejbj>
2002/03/21 19:08:36 |
実は私は神学には疎い(汗) 神学に結構疎いのです。この投稿が出来たのも、ヒンドゥー至上主義の理論が非常に世俗的だからです。 とほほさんはカトリックですか。私は現在無宗教です。ただ、ゾロアスター教には強い関心がありますね。 |