ペットボトルを置いて・・・

〜 ビデオ「12.4黒い彗星@渋谷」解読 〜

文責 pippo (2000.12.11 14:30更新、2000.12.12 23:33更新)



目次



はじめに

12月4日午後、東京渋谷の繁華街で「京都朝鮮初級学校襲撃一周年」のデモが行なわれた。主催者は、排害社、主権回復を目指す会、在日特権を許さない会などで、80名ほどが民族差別的憎悪の言葉を渋谷の街で叫び続けた。

それを見過ごすことができない、ひとりの在日韓国人三世の青年がいた、「黒い彗星」である。

デモ隊の正面に向って彼は静かに歩み出した。持っていた一枚の横断幕(バナー)をデモ隊の正面で掲げ抗議の意思を示す為であった。横断幕には次のような言葉が書かれていた。

「ANTIFA☆黒い彗星」

「民族教育の権利を守るぞ!!」

「阪神教育闘争の精神を受け継ぐぞ!」

「祖国統一!」

しかし、たった独りの「黒い彗星」はデモ隊リーダーたちの体当たりをくらい、取り押さえられ、集団暴行を加えられた。顔面にパンチが浴びせられただけでなく、頭部にはトラメガ(ハンドスピーカー)で何度も打撃が加えられ、全治三週間の傷を負った。渋谷署は、あろうことか暴行被害者である彼を暴行容疑の現行犯として逮捕した。

産経新聞は次のような記事を載せた。

朝鮮学校への抗議デモ参加者に飛びかかり妨害 27歳男を逮捕
2010.12.5 00:00

  デモ参加者に飛びかかり妨害するなどしたとして、警視庁渋谷署は4日、暴行の現行犯で、男(27)を逮捕した。 逮捕容疑は、同日午後3時25分ごろ、東京都渋谷区神南の路上で、デモに参加していた60代の男性に飛びかかり、暴行を加えたとしている。

  同署などによると、デモの参加者が男を取り押さえ、デモの警備をしていた警察官に引き渡した。デモには約100人が参加し、朝鮮学校に対する抗議活動をしていた。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101205/crm1012050003000-n1.htm

しかし、渋谷警察署の発表および産経新聞の記事に反して、逮捕が全くの虚偽事実に基づくものであることは、繁華街渋谷に集まっていた人々の目には明らかだった。「黒い彗星」の知人は携帯モバイルで動画を撮影していた。そこには暴行を加えた者達の姿が映し出されていた。産経新聞はいつの間にやらその記事を削除した。

「黒い彗星」、彼が何をやってなぜ報復を受けたか、このモバイル動画によって知った人たちも、歩みはじめた。

ソースビデオ

YouTube - 12.4 黒い彗星@渋谷
http://www.youtube.com/v/qvdXPdxFjt8



Dこの動画を含むページ



第1章 渋谷マルイ前

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第2章 ペットボトルを置いて


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以下は、排外デモに抗議するため、
ゆっくりと交差点を横切ろうとする「黒い彗星」のようす。
デモ隊先頭の女性陣を狙って突進したなどということが
とんでもないデマであることがわかる。


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デモ隊列の前まで行き、横断幕をひろげようとした「黒い彗星」に
<主権回復を目指す会>の西村修平が、側面から近付いてきた。
抱きついて取り押さえようとした。
相手の体に最初に手を掛けたのは西村修平であった。



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全力疾走でタックルを仕掛けたのは、日の丸鉢巻で<排害社>隊旗をもった
加藤哲史である。<主権回復を目指す会>がアップしたビデオでは、
「デモ妨害者が全力で飛び込んで襲撃した」というコメントが付いているが、
それは、この加藤哲史のタックルを勘違いさせる、デマである。



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大きなトラメガをもって駆け寄ってきたのは金友隆幸か?
槇泰智か? 集団リンチが始まっている。


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画面左側からの一団は、警視庁渋谷署の警備(公安)の
私服警官と思われる。


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暴行を受けた「黒い彗星」は、隊列の向こう側
歩道に引っ張られた。デモ隊の男性はみな襲撃に
向い、残るは女性のみ。



遭遇シーンを拡大する

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上着の下から手製の横断幕を取り出し、
それを広げようとする「黒い彗星」。
ベージュの背広を着て右手に「日の丸」を持った西村修平が
彼を取り押さえよう、側面から接触してきた。


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西村修平が「日の丸」の旗竿を向こう側に廻しこんで、
「黒い彗星」を羽交絞めにしようとする。



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西村修平が、日の丸の旗竿を使って羽交い締めした瞬間。
旗竿が折れたのは、これが原因であろう。→
<主権>サイトの写真

「黒い彗星」は横断幕を頭の上にかざして、広げようとしていた。


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「黒い彗星」は西村修平を振り払うように、体を回転させた。
それが「柔道の投げを打った」と宣伝されている行動である。
『巴投げ』だとか『背負い投げ』だとか、あることないこと、
インターネットでは、大袈裟なデマが飛びかっている。


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突っ込んでいくハチマキ姿の加藤哲史。
「黒い彗星」が柔道ワザをかけたと宣伝する写真は、
この瞬間を反対側から撮ったものと思われる。
「花うさぎ」氏撮影の写真


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加藤哲史の突っ込みの勢いもあって、
西村修平は地面に転びつつある。
画面左側の指揮棒をもった渋谷署の指揮官は
衝突を制止しようとしていない。


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ハチマキ姿の加藤哲史が「黒い彗星」に組み付いた。



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大きなトラメガ(ハンドスピーカー)を背負った金友隆幸 槇泰智。
デモ隊員による集団暴行が始まった。


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集団暴行が行なわれるのをみて、
渋谷署警備課の私服警官の一団が駆けつける。
右端の女性たちはデモの先頭列である。
デモ主催者たちが自分たちのサイトで宣伝している
「先頭の女性たちを襲った」は全くのデマだということが判る。




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「黒い彗星」は、向こう側の歩道に引っ張られ、
こちら側では、排外デモの男性はみな襲撃に向い、
女性たちだけが隊列に残っている。





   「黒い彗星」が排外デモの眼前で拡げようとした横断幕


「ANTIFA☆黒い彗星」
「民族教育の権利を守るぞ!!」
「阪神教育闘争の精神を受け継ぐぞ!」
「祖国統一!」と読める






第3章 リンチ&「逮捕しろ〜」

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歩道でのリンチを遠巻きに見ているデモ隊。
ベージュ色の上下を着た西村修平は、
公安からの尋問を避けるためか、後方に退避している。
転んだだけで怪我はたいしたことなかったのだろう。
これは西村修平が「黒い彗星」のふり払いによって転んでから、
僅か11秒しか経過してないシーンである。


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これも僅か16秒後のシーン。





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以下、略




参考資料:
救援弁護士から担当検事宛意見書


12月6日月曜日、この意見書が提出された後、「黒い彗星」は釈放された。

被疑者の釈放を求める意見書

2010年12月6日
東京地方検察庁検察官 殿

                    被疑者  渋谷警察署1番

 上記の者に対する暴行被疑事件について、下記の通り意見を述べる。

                    弁護人   [ 記   名 ]
                       [ 弁護人住所  略 ]


意 見 の 趣 旨

   検察官は被疑者について勾留請求をせず直ちに釈放されたい


意 見 の 理 由

  被疑者は無実であり、本件逮捕は違法であって、被疑者には罪証隠滅や逃亡を疑うに足りる相当の理由も全く存在しない。


1 被疑者は無実であり相当な嫌疑はない

報道によれば、被疑者は、本年12月4日午後3時25分ごろ、東京都渋谷区神南の路上で、デモに参加していた60代の男性に飛びかかり、暴行を加えたととの被疑事実で現行犯逮捕されたと当職は聞いている。

 しかし、被疑者は実際にはかかる行為はなしていない。

 このデモは、右翼団体「在日特権を許さない会」(以下「在特会」という)が主催したものである。昨年12月4日に、京都朝鮮第一初級学校を襲撃し、児童たちに対して拡声器で聞くに堪えない差別・排外主義的な罵詈雑言を浴びせ、暴行、破壊行為を繰り返すなどし、襲撃実行犯の一部は逮捕、起訴された。ところが、在特会はこれを「義挙」とし、犯罪者を「勇者」と崇めている。今回のデモは、その1周年を記念したデモである。それに対して、心ある市民が怒りと抗議の声を上げるのは当然である。

被疑者も、このデモに対して抗議の声を上げていたところ、在特会の協力団体である「主権回復をめざす会」の西村修平が、被疑者に対して、頭を下げた姿勢で突進してきた。

被疑者がそれを払ってかわしたところ、西村は転がり、それを合図に、在特会や「主権回復をめざす会」のメンバーが、被疑者に襲いかかり、持っていたハンドマイクで被疑者を殴る、頭髪や襟首をつかむ、蹴る、日の丸の旗竿で突く、などの暴行を加えた。

その結果、被疑者はハンドマイクで殴られた右額を切って出血し、左眉毛の上や、左目の下、唇の横などにも擦り傷や切り傷を負い、左膝にも擦り傷を負って出血した。

このように、真実は、被疑者は傷害の被害者であり、本来、捜査の対象となるべきは、在特会や「主権回復をめざす会」のメンバーなのである。

 よって、被疑者には暴行罪はおよそ成立しない。

 したがって、被疑者には「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑訴法207条、60条)が認められない。


2 本件「現行犯逮捕」は違憲・違法である

前述の通り、被疑者は「現行犯逮捕」されたとされている。

 しかし、在特会や「主権回復をめざす会」のメンバーが被疑者を暴行した後、警察はそれを引き離して、被疑者と15分程度、現場で雑談をしていた。その後、「保護する」と言って、手錠をかけることもなく、被疑者をパトカーに乗せ、渋谷警察署へ連れて行った。 そして、午後4時27分頃、渋谷警察署の取調室に入ったところ、その場でようやく「現行犯逮捕する」と告げたというものである。

 しかし、現行犯逮捕は、言うまでもなく「現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者」を逮捕する場合を言うのであって(刑事訴訟法212条)、15分程度も現場で雑談をし、「保護する」(右翼団体から身を守る、という意味だと解釈される)と言ってパトカーに乗せる、というのでは、もはや「罪を行い終わった」と言える状況ですらない。「犯行との時間的・場所的接着性」をもはや欠いている。

そもそも、本来、苛烈な人権制約である逮捕は、裁判所による令状審査にかからしめ、もって適正手続を担保し、人権侵害を防止する、というのが憲法33条の趣旨である。その例外として、現行犯逮捕が認められるのは、犯行と接着しているために、濫用の危険が少なく、かつ、逃亡及び罪障隠滅の防止という目的を遂行するには令状審査を経る時間的余裕に乏しい為である。

 しかし、雑談をして「保護」すると言いつつ、警察署に来てから現行犯逮捕する、というのでは、現場においては逃亡及び罪障隠滅の防止という目的が認められなかったものといえる。そうであれば令状請求の手続を得るべきであるがそれを行わなかったのは令状主義の潜脱である。また、逮捕が後で告げられなかったことにより、弁護人依頼も実質的に遅れるなど、被疑者の防御権が実際に侵害された。

 よって、本件「現行犯逮捕」はその要件を満たしておらず、そのことによる弊害も重大であって、違憲・違法と言うべきである。


3 被疑者には勾留の理由がない

 被疑者は、定まった住所を有している。

 被疑者は無実であるから、当然隠滅すべき罪証も存在しない。

 また、「証人」たる在特会や「主権回復をめざす会」のメンバーらは、被疑者に威迫されるような存在ではない。

 また、前述のように被疑者は無実であるから、むしろ自己の不起訴を勝ち取りたいはずである。

 にもかかわらず、被疑者が上記の住居を捨て、わざわざ逃亡するというのは著しく常識に反する。

 被疑者は、現在は黙秘し調書の作成を拒否しているが、そのことを理由に「逃亡すると疑うに足りる相当な理由」や「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当の理由がある」とするのは、憲法38条1項で保障された被疑者の黙秘権の侵害であり、およそ違法として認められない。


4 勾留の必要性は認められない

 本件においては、前述のように全く勾留の理由が認められないことからすれば、仮に検察官が勾留を請求するとすれば、身柄拘束を利用して虚偽の自白を得て転向を強要するための勾留と考えられるのであり、黙秘権を保障した憲法38条2項違反であって、その点からも本件勾留の必要性(刑事訴訟法87条)は認められない。


5 結語 

 よって、検察官におかれては、被疑者には勾留の理由も必要性もないものと認め、勾留を請求せず、被疑者を釈放されたい。

 一時も早い被疑者の身柄拘束からの解放こそ、捜査の適正を確保すべき(刑事訴訟法193条)検察官の責務である。


 以上




参考サイト


・12.4 黒い彗星★救援会ブログ
  http://d.hatena.ne.jp/free_antifa/
・「12.4黒い彗星★救援会」twitter
  http://twitter.com/free_antifa
・ペットボトルを置いて
  http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20101207/p1
・例によって被害者を装う「行動する保守」
  ――12月4日・渋谷での在特会・主権回復を目指す会・排害社による集団暴行事件について
  http://kdxn.tumblr.com/post/2132625433/12-4
・産経新聞誤報記事(現在削除されています)
  http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101205/crm1012050003000-n1.htm
・「日の丸棒」の使い方
  http://ni0615.iza.ne.jp/blog/entry/1262250/


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