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<国籍確認>子どもたちの願い届く 東京地裁判決
日本国籍を求めた9人の子どもたちの願いが届いた。出生後に日本人の父親に認知されながら、フィリピン人の母親と婚姻関係がないことを理由に「日本人」と認めない国籍法の条文を、29日の東京地裁判決は「違憲」と断じた。同種訴訟を巡って東京高裁は先月末、原告の男児(8)の国籍を認めた1審判決を取り消したばかり。母親や支援者らは、国側の控訴を念頭に置いて「最後まで戦う」と気を引き締めた。 「この裁判は、自分たちの子どもだけでなく、同じ立場の全国の子どもたちのためでもあります。国は、できれば控訴しないでほしい」。判決後の会見で原告の母親の一人、タピル・ロサーナさん(41)は語った。前夜は不安で眠れなかったが、勝訴判決に「胸がいっぱいです」と涙ぐんだ。 長女マサミさん(8)を産んだ時、出生前に父親の認知がないと日本国籍を取得できないことを知らなかった。「正美」と書いて出生届を出した際、役所の担当者から「フィリピン人なのでローマ字で書くように」と告げられた。二女直美さん(4)は出生前の認知で、姉妹で国籍が異なる。会見には直美さんも参加し「お姉さんに同じ国籍をください」と幼い声を振り絞って訴えた。 先月末の高裁判決で国籍取得を認められなかった男児は上告しており、最終的な司法判断は最高裁が示すことになる。原告代理人の近藤博徳弁護士は「違憲との判断が維持されて、子どもたちに国籍が認められ、最終的には法律が改正されることを期待します」と語った。【武本光政】 ◇より明確に違憲性指摘 非嫡出子の国籍取得に父母の婚姻を条件とした国籍法3条1項の規定について、29日の東京地裁判決は、最初に違憲と判断した昨年4月の東京地裁判決よりも明確に違憲性を指摘した。 母親がフィリピン人の男児(8)の国籍取得を認めた昨年4月の東京地裁は、男児の両親が内縁関係にあり、日本との結びつきが強いことを重視したうえで、法的な婚姻関係を要件とした同項の規定を違憲とした。ただし「内縁関係」による日本との結びつきの強さは「どの程度なら認められるのか」との疑問の声もあった。 今回の原告9人には、父親が音信不通で「内縁関係」がない家族もある。しかし、この日の地裁判決は、内縁関係のような「生活の同一性」を条件とするのは社会の多様化の中で妥当ではないと指摘。国籍の要件として婚姻関係を設けたこと自体を違憲と判断し、より多くの人に広く国籍を認める考えを示した。 多様な家族のあり方を容認する司法の流れは、これまでにもあった。国籍法の別条項が争点となった訴訟の最高裁判決(02年11月)では、裁判官5人のうち2人が3条1項について「国際化が進み価値観が多様化し、親の婚姻の有無で子の国籍取得に差異を設けることに合理性を見いだすことは困難」と指摘し「違憲の疑いが極めて濃い」と補足意見を述べた。もう1人の裁判官も同項に「合理性に疑問を持っている」と意見した。 昨年4月の東京地裁判決は控訴審で覆され、原告側が上告した。最高裁の判断が注目されるとともに、国籍法見直しに向けて国会でも議論を本格化させる時期が来ている。【武本光政】 (毎日新聞)
- 3月29日22時10分更新
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